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平成27年度(1)  武田信子 赤ちゃんになってみようー共感の力を育てる子育て

「赤ちゃんになってみよう ―共感の力を育てる子育て」 武田信子さん の講演より

第1回  6月7日(日)
10:15~12:00 講座
12:30~14:00 講師を囲んでの語り合い

「赤ちゃんになってみよう ―共感の力を育てる子育て」

講師:武田信子さん(武蔵野大学 教授)

武田信子さんは以前のブログ(記事)にも挙げたように世界のいろいろな子育てモデルを研究され、日本における子育て支援の在り方を提案されてきました。
今回は、今の赤ちゃんを見て感じたこと、対応しないといけないことをわかりやすい例え話を織り交ぜながらスライドショーと共にお話やワークショップをして下さいました。
今回は午前の部の講座内容についてご紹介します。

まず、子どもの発達、このままじゃまずいと思う日本の子育てについて「未来を創る子どもたちをどう育てる?-親が子を育てる安全な地域を保証するために」という問題提起の元、以下の目的を挙げられました。
①現在の地域の活動、子どもがどう育っているか照らし合わせる
②みんなで一緒に考えて動く方法を考える
③自分が社会にどう関わって子の代わりに発信できるか

子どもは自分の生きている社会がどう動いているか試している=実験している、とお話し下さいました。(卵を何度も落として見る=母親の怒りの幅を見ている)もちろん、子どもの実験の場は家庭だけではなく地域も含まれます。子育ても親だけが担うのではなく国や地方公共団体がセーフティーネットになってきます。しかし、それが十分ではないためNPO団体が担っているのが現状です。
人は知らないことはできません。子育てをしている親も自分が子どもの時に抱っこやおんぶを十分にしてもらえなかったら自分の子どもにもできません。また子どもの実験の場が少なければその分、子どもも育たないのです。

そこで武田さんは子育てモデルの必要性を話されました。
少子化の今、子どものモデリングは身近な親以外にテレビの影響が大きいです。しかし、それは子どもの発達を飛び越えていると指摘されました。

ここで模造紙を遣って子どもの発達についてワークショップが行われました。
武田さんは、子どもの発達とは
体(自分の比較・自分と他人の比較)→心(心が揺れる)→(知的自分は何者か脳が動く)
とお話されました。

そこで武田さんは、0歳がまなびの時期であり、就学前に脳は生成されるため乳幼児期の関わりが大切だと話されました。

しかし、いくら大切でも大人からみた限りでは乳幼児のことはわかりません。
そこで今回のテーマである「赤ちゃんになってみよう」です。

まだ寝返りもできない赤ちゃんは日頃どんな風景を見ているのでしょう。
一日のほとんどを仰向けで過ごしている赤ちゃんにとってどういう天井を見ているのか、
つまり赤ちゃんにとってどういう天井を見せられるのが良いのか、という考え方です。

また、泣くことで親が来てくれると楽しくなり学習意欲が増します。しかし逆に泣いても親が来ないと「やっても何もしてもらえない」→「やらなくなる」→「学習性無欲感」に繋がるそうです。

これらから、どういった環境で育つのが子どもにとって良いのかを考えられる親の身体感覚が必要になってくると話されましたが、今の親世代が持つにはなかなか難しい感覚だとのことでした。
例え障害を持って産まれても良い刺激があれば脳は順応します。
それをもっても乳幼児期の環境要因が大きく関わってきますが、今の子育て社会はそこが危機にさらされているため子育て支援として何ができるのか、一人ではなく、みんなで考え合うことが大切だと話されました。(参加者を交えた意見交換会は午後に行われました)

子どもにとって良い環境とは何か、子どもはどう育てられたら良いのか、という正解のようなものはなく、子どもの発達、五感をどう発達させるか、ということを考えることで、子どもの実験の環境をどう豊かに変えられるのか、ということに結びつくとお話し下さいました。

今回、武田さんのお話をお聴きし、子ども、赤ちゃん(の立場)になってみることが未来を創る子ども達をどう育てるのか、また、地域の1人として子ども達が大きくなった時にどのような社会、環境になっていたら良いのか、ということを考えられるきっかけになったと思います。
それを考えるのは1人でも一回でもなく、今回のようにいろいろな立場の方との意見や情報交換が必要だと感じました。今後続く15のまなびの中で少しでも多く、子ども達が将来どのような姿になって欲しいか、どのような環境で育ってほしいのか考えていければと思います。(aoyagi)