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平成27年度(14)  谷口英子 地域を知り地域をサポートする

(14) 1/11(祝)  谷口英子
地域を知り地域をサポートする

15のまなび 谷口英子さん  「地域を知り地域をサポートする」

1月11日(月・祝) 10:15~12:15 講座
午後:講師を囲んでのワークショップ

「地域を知り地域をサポートする」
講師:谷口英子さん 
NPO法人まちづくりサポートクラブ副代表理事

早いもので年が明けてからもう半月近くなりますが、遅ればせながらあけましておめでとうございます。
2016年、最初の15のまなびは、京都の北部に位置する「海の京都」と言われる舞鶴から谷口英子さんを講師としてお招きしました。谷口さんは今までの15のまなびにも参加者として何度も参加していただきました。小学生から高校生まで5人のお子さんの子育てをされている中、大変行動力のある方でしたが、今回のお話で行動力の高さもさることながら、積極性の高さと軸の強さも感じられ、参加者は谷口さんのお話にどっぷり浸かり感化されているようでした。
谷口さんは舞鶴で舞鶴市西市民プラザでの地域子育て支援拠点事業での子育て支援の他、介護予防事業の運営などにも携わっており、「舞鶴」という地域全体としてのサポートを考えて活動されています。まずは自分の活動するフィールドでもあり、生活する場でもある舞鶴の紹介をして下さいました。舞鶴市は年々人口と出生数が減少し、高齢化が上がっているまさに少子高齢化の状態とのこと。また、舞鶴は東西で地域性が分かれており、二つの歴史が一つになった街だとお話し下さいました。そのような舞鶴に地域子育て支援拠点は東西のバランスを考えながら6つ拠点があるそうです。
次に、ご自身のこと、「人となり」を語って下さいました。谷口さんは、もともと障害児や視覚障害の分野に関心がある方でした。大学では社会福祉士学科で社会福祉学を学ばれました。谷口さんはご自分の人となりを、いろんな人生の「教訓」からできていると仰り、話す事も聞く事も好きだと仰っていました。その教訓の中で、大学で学んだ3つの事が今でも残っているそうです。
①子どもの成長はらせん状
子育ては下に向いているように見えるが実際は上がっている、ということを意味しているそうです。
②「言語」「非言語」のコミュニケーションがある
障害児や障害者との関わりの中で、「言葉」以外の表現の仕方、言葉に頼らずに思いが通じた時の素晴らしさを実感されたようです。
③物事には段取りがあり見通しをもつこと
物事を捉えるにはどこか一部分を特化するのではなく全体像、見通しを持つ事が大切とのことです。
このようなキーワードと軸を持つ事で、その都度、立ち戻れるようになるそうです。そのため、谷口さんは「自己覚知」で自分を知り、知った自分の中でダメだなと思うところも“良し”とできるかどうかの「自己肯定感」を持つ事、全部ひっくるめた自分を知ってもらう「自己紹介」を大事にされていました。自己紹介は聞いてもらう人に「えっ、それ何?」と引きつけることがコツだそうです。
それは自分の事だけではなく、自分の活動している事を紹介する時も同様なようです。例えば、まちづくりサポートクラブの活動を紹介する時3つのキーワードがあり、まずは「当事者主体の子育て支援です」と言っているそうです。ただ、それだけだと相手は「当事者主体ってどんなことですか?」と聞き返してくれるそうです。谷口さんはご自分のお子さんが小さい時から子どもを連れて子育て支援をされてきた経緯から、子育ての親は支援の受け手にもなるし担い手にもなる、と感じられたそうです。子育て支援は子どもをどうするか、親をどう支援するかなどアプローチの方法が多様ですが、「親の自立支援とは、親が前向きに子育てできること」と、思ってもらえるアプローチが必要とのことです。
2つ目のキーワードは「居心地の良い居場所作り」。
自分にとって居心地が良いと感じる場所で自分にも何かが出来る、と自分の中の力に気付ける事、その力を更に発揮できるようなエンパワメントを大切にされていました。
3つ目のキーワードは「子育てをキーワードにしたまちづくり」。
子育て支援、は何も子育てをしている親だけを対象にしているのではなく、いろんな立場の人がそれぞれの立場なりに子育てに関われると言うことのようです。それは○○だけのスタッフ、○○だけの支援者ではなく、全員が支えてもらいながら支えることのようです。実際の活動として、商店街の立地やバス会社との連携を例にお話し下さいました。

そのように、まきこめる、まきこまれるひとたちとの繋がりを大切にするために「拠点会議」と「ひろば会」を設けているそうです。拠点会議は公的なもので、毎月一回、市内の子育て支援拠点を持ち回りで行っているそうです。メンバーは拠点スタッフと市の子ども支援課になるそうですが、内容は各拠点のスケジュール調整、事業報告、育児相談状況などです。初期の会議では毎月のスケジュール調整をするにあたり、各拠点でイベントや行事が重ならないようにしていたようです。それは色々な拠点を巡ってもらいたい、という思いがあったようですが、谷口さんは重なっていても回ればいいのではないか、自分で選択すれば良いのではないか、自分で選択すれば主体的になれる、と感じたそうです。また、事業報告も最初はどのイベントに何人来たか、という人数報告がメインだったようですが、大切なのは人数ではなく、どのような人達が来て、どのような様子だったのか、ということを6つの拠点が共有、把握する事だとお話し下さいました。それは育児相談でも同じことが言え、そのような支援者側の情報共有と把握は虐待予防にも繋がると仰っていました。
ひろば会は、親子に何かしら関わっている人との勉強会とのこと。内容は発足したメンバーが順々に幹事を回し、幹事主導で決めているそうです。ここでは、子育てに関わる方、行政、保育士など他分野の関わりがあり、今年度は保護者の寄り添いや支援者の資質向上に向けて行われました。そのため毎年、年度初めに機関同士の自己紹介を大切にしているのだとお話し下さいました。他分野の関係機関が集まると言う事は、一つの事柄を多角的に見られるとのこと。そのことを、モザイクを重ねる、と言葉にされていました。更に、自己紹介をする事で、自分の得意分野、知っている事、を知り合えます。それは「顔の見える繋がり」でありその繋がりから生まれた支援が地域の親子に返していけるのだとお話されていました。

最後に、地域を出るともっと地域を知ることが出来る、という事についてお話し下さいました。それは、外からの風を受け、風に乗ることで更に自分達の地域を知れたり見つめ直すきっかけになるそうです。その風を受けるためにも、繋がり合うこと、知る事、が大切だと仰っていました。地域に限らず、自分の活動するフィールドに居るだけでは、一つの側面、偏った視点と先入観に捉われてしまい、そのフィールドの本質がわからないと感じました。そのフィールドで当たり前な事が、他のフィールドでは当たり前ではないと気付く事で今まで見えていた、わかっていたと思っていたフィールドが全く違うものに見え、新たに知れるのだと思いました。谷口さんは、外から見て初めて知る地域性、と仰っていました。“そういうものだ”と思っていることや、刷り込みにより不便だと気付かない事もあるそうです。それに気付く事が地域的な自己覚知であり、自分達が馴染んでいけることこそ自分達の地域になり、それが地域に対する自己肯定感になると仰っていました。
外から見る事で“知る”のは、物事の全般に言えることで、子育ても同じく、自分の育った環境が当たり前だと思って育つことが多いですが、たくさんの人と関わる事で自分が思っていた当たり前がそうではないことを知ると新たな視点、価値観に気付くと思います。それをどう取捨選択するかは、その人なりによりますが、一つの環境、視点に留まらず外からの風を受ける事は幅を広げる事になります。その意味でも子育てをまちづくりに繋げる谷口さんの活動はとても勉強になり、心に残るお話がたくさんありました。

午後は、自己紹介シートを使っての、自己紹介ワークショップを行いました。シートの種類はいくつかありましたが、今回はどの自己紹介でも使う基本的なもの(自分の名前、好きな○○、○○の事なら役に立てます、今年の私のNEWなこと)で行いました。これは「自分」にどんなタグ付けをするかを考え、タグ付けした自分を人に伝える事で、別の機会に声をかけてもらったり新たな繋がりが生まれるそうです。他には自分の過去、現在、未来を考えて自己紹介するシートがあり、これは自分のやりたい事を伝えられるので他者から応援してもらいたい時に使うのだと教えて下さいました。
ワークショップではシートを基に1人1人自己紹介(自分自身の人となり、仕事、趣味)していきました。抱っこやおんぶ、母乳育児、絵本、支援センター、助産師、子育て支援者、キャリアカウンセラーなど今回も多分野の方が参加されました。今回の自己紹介を聞き、改めてこのような多分野に渡る人達の共通のタグは「子育てとは 子育て支援とは」だと、感じました。