toggle

平成26年度(11)  明和政子② 14:00~17:00 ヒトらしい子育てとは何か

(11) 11/22(土)  明和政子② 14:00~17:00
ヒトらしい子育てとは何か

午後の部 14:00~17:00
「ヒトらしい子育てとは何か」
ヒトらしい環境を育む環境の役割を考えるにあたり  

まずは、チンパンジーの出産、子育てについてのお話
野生の群れの中のチンパンジーは
基本的にはひとりで産み、育てる。
ところが、飼育されたチンパンジーの中には
2例に1例が出産時にパニックになったり、
養育拒否がおきている。

これは飼育されたことにより仲間の子育てを見る、
ふれる経験がないからではないか?
養育行動は、自然にできるものではないといえるのでは。

野生チンパンジーは、6~8年かけて
子どもを育てあげてから次子を出産というサイクルで、
死ぬまで生み続けるのだとか。

それに対して、ヒトの子どもは自立に
さらに長い時間がかかるにもかかわらず、
第1子が幼いうちに次子を出産するケースが多い。

ヒトの女性だけが、閉経後も長く生き
「おばあさん仮説」といったように
おばあさんが果たす役割があるのでは?

こういったことから、
ヒトは、母親一人で子育てをする動物として進化して
こなかったのではないか?

ヒトは出産のさいにも、他者からの養育支援を必要とする
生物なのではないか?

子育ては、母親を中心としつつも、母親以外の他者も含めた
共同育児によって、養育学習を進めていくのがよいのでは?

「子どもが育つ、親も育つ」というように、
養育経験は、親に特有の脳の働き方を形づくるということも
 脳の研究からわかってきている。

赤ちゃんの感情がお母さんの心身にもたらす影響を
心拍数の変化から探る研究については、
明和先生と共同研究されている水垣さんのほうから

泣いた後笑った映像を見たお母さんは、心拍数が
上がらなかったのに対し、
自分の赤ちゃんの泣いた映像だけを見たお母さんは、
泣きやんでいても心拍数の変化からストレスが続いていること、
身体的ストレスが高いといえる。

こういった研究の結果をもとに、
子育て支援では「こどもー親」をセットで考え、
4か月健診でも、 赤ちゃんの発達をみるだけではなく、
お母さんの体の状態もみていくことが大切なのではと、
公的機関への提言も されていく予定とか。

さらに、発達障害が急増しているにもかかわらず、
その半数は原因不明の現状にたいし、
「身体ー環境」相互作用において
なにがおこっているかを科学的にときあかし、
それにもとづく支援法を提案することが必要。

早産児も増えており、発達課題についての
研究とその支援法の提案もめざしているのだとか。

文章にすると堅いのですが、
じかにお話を聞いていると、
現代の子育ての課題にたいして
科学的な検証に基づいてどう支援したらよいかを
真摯に考え取り組んでらっしゃる、
明和先生の熱い思いが伝わってくる講座でした。

さらに理解を深めたい方は、ご参考にしてください。

『まねが育むヒトの心』 明和政子著 岩波ジュニア新書
『霊長類から人類を読み解く なぜ「まね」をするのか』 
           明和政子・松沢哲郎 河出書房新社