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平成27年度(5)  高橋由紀 学ぼう!赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア:幼児期編

15のまなび 高橋由紀さん「赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア:幼児期編」

「遊ぼう!赤ちゃんの発達に合わせたセルフケア:幼児期編」
10:15~12:30 講座・ワークショップ
13:10~14:20 講座・質疑応答
講師:高橋由紀さん(ベビーヨガアソシエイト 代表)

今回は6月21日に行われた講座の幼児期編ということでベビーヨガアソシエイトの高橋さんに再度来ていただきお話をお聞きしました。前回の反響からか、とても多くの方達が参加して下さいました。幼児期編ということでしたが、幼児期に留まらず学童期、大人に通ずる内容でした。今回も参加型ワークショップが豊富で皆さんいかに常日頃自分の体にゆがみや不調を溜めているか感じられたかと思います。

先生は、ご自身が椎間板ヘルニアで悩まれていた経験からボディーワークを学ばれていました。子どもと遊ぶボランティアをされていた時に子どもの動きが気になったそうです。遊びの中で子どもの動きのサポートをしていたら児童館の先生に講座を開いてみんなに広めて欲しいと言われたことが今の活動に繋がっているそうです。
当時は赤ちゃんの体はそれほど気にならず、成長するにつれて精神面などの影響からからだにゆがみが生じやすくなるためキッズヨガを広められていました。それは子どもに伝えるだけではなく、その親にも伝える必要があります。しかし大きい問題を抱えている親子ほど伝えるのが難しく親自体、子どもがどう感じるのか知らない、わからないという親が多いことに気付いたそうです。そのため先生は「どうやったら子ども達が気持ちよく感じられるか」且つ「そのことを親も獲得しやすいか」ということを意識して講座をするようになり、今日の講座も、大人にも子どもにも通じる内容となりました。

まず、前回の振り返りから始まりました。(詳しくは第二回の記事をご参照ください)。人は誰しも重力を感じるため、首が据わる時には首を支える必要があるから首が詰まります。しかし、その事を知らずにその時に不調をその時にケアせず次の発達に進むとゆがみの原因になります。つまり、その時の不調をその時にケアすると発達が「促される」そうです。先生は講座をする時に「促す」という言葉をあえて使うそうですが、実際は適切なケアをすることで発達を「損ねない」「阻害しない」ということになるそうですが、そのままの言葉を使うと場合によってはしんどい思いをされることもあるので多くの方達にベビーヨガの大切さを知ってもらうためにも「促す」という言葉を選んでいるそうです。そういった細やかな心配りからも先生の活動に対する熱い思いが感じられました。
誰しもが適切な時期に適切なケアを出来ればいいのでしょうが、それは難しいです。しかし、適切な時期を逃したからと言って取り返しがつかないわけではなく、乳幼児期に得られなかった事を、成長してからより丁寧にケアをすること、また、完璧なケアの方法、時期を考えるのではなく、その子がその子らしく生きられるケアをすることが大切だとお話し下さいました。

幼児期に移行するための導入体験としてうつ伏せや仰向け、パンサーウォーカーと言われる四つん這い歩行をみなさん体験されました。パンサーウォーカーはつま先でハイハイをし、膝は床から少し浮かせて進む歩行です。みなさん実際行ってみるといろいろな歩行がありました。手を外に向かせて歩く方、手を握って歩く方、手足をどのように出して良いか困る方。しかしそれは先生に指摘されるまで自分では気付かない事でした。この体験から四足歩行を経て二足歩行になった時、使う筋肉の違いを感じることが出来ました。四足歩行は脚の後ろの筋肉を使いますが、この筋肉が十分に養えていないと二足歩行になったとき、前に進む力に繋がりません。ハイハイ、つかまり立ち、二足歩行、と何気なく子どもは発達しているようですが、何もせずスムーズに歩けるようになるわけではないと指摘して下さいました。
よく、ハイハイの時期が長い方が良いなど耳にすることがありますが、注目するところは期間の長さではありません。見て欲しいのは一日の内にどれだけハイハイをする時間があるかというところです。いくらハイハイの期間が長くても一日の内にハイハイをする時間が短ければ話は別になってしまいます。その子がその時にどういう風に過ごしてきたが大切であり、そこに至るまでの運動を十分に楽しめたか、その時に必要な動きを十分にするのが良いと教えて下さいました。それを知るだけでもどれくらい自分の子どものことを見ているか、ということを考えさせられました。

次に背中の緊張をほぐしたり足の付け根を刺激したりする体験をしました。足の付け根を刺激する事は腰を悪くせず、軸がありしなやかになるために大切なことです。軸は乳幼児期に獲得すると仰っていました。軸、体がしっかりしていると言う事は体幹がしっかりしているという事であり、その後の枝葉もしっかり伸びやすくなります。また、ただ単純に悪いところをケアすれば良いと言うわけではなく、悪くなった原因を考え根本的にケアをしなければ意味がありません。それには子どもがどこに不調を感じているのかよく見る必要があります。抱っこをするときは首の後ろとおしりの下を支えることが大切です。それはその部分を支えられると安心すると言う他に、人に触れられることで癒されることも含まれています。そうでないとロボットに育てられていることと一緒です。人間の子育ては触れて声を掛けてぬくもりを感じるもの、心に働きかけるものです。だからこそ触れて、自分も体験して、子どもがどう感じているのか、また、触れている方の感性も育まれると仰っていました。
ここで、声を掛けながら、という話が出ましたがマッサージに限らず日常生活でも「歌」、特に「童謡」は子どもにも親にも良いリズムを与えてくれるものだとお話し下さいました。日々忙しくしているペースは子どもにとっては適切ではないからです。歌を歌う事は会話よりもコミュニケーションになり、先生のご自宅ではミュージカルのような世界だとお話されていました。ただ単純に子どもを急がせる時に、眉間にしわを寄せて「急いで」と声を荒げるよりもすぐに動きたくなるような歌を歌うなど動きや遊びの中にその時の調子に合わせた歌を取り入れているそうです。子どもは好きな音楽に耳をすませるところから言葉を獲得します。そして子どもはお母さんの声が好きです。お母さんの声、歌に耳をすませることでコミュニケーションや言葉の発達が促されるそうです。

午前中の最後のワークとしておしり歩きと、体幹を強くするためのマッサージを行いました。骨盤やおしり、背中を緩めるのですが振動が伝わりにくい方も多く、緊張がつもっているせいだと教えて下さいました。また、大切なのはゆるめてあげる、気持ちよくさせてあげる、という気持ちを相手に伝えることだと仰いました。

午後は先生を囲んで体のゆがみの原因についてお話をお聞きしました。体のゆがみの原因は固定姿勢であり同じ姿勢を続けることで緊張がつもりゆがみになるそうです。赤ちゃんをずっと同じ姿勢で寝かせておくことも一緒です。子ども達の姿勢について親が気にするようになる、それを家庭で出来るよう支援者として伝えられるようになることが必要になってきます。そして、支援者だけが意識するのではなく支援者が伝えていくことで子どもの体を見た時にみんなが気にするようになることが子どもの発達をより多く促すことに繋がります。
また、固定姿勢をほぐすことは体に良いだけでなく、適切な刺激を受け取れるので脳の発達にも良いそうです。ほぐす側もほぐす前と後では何が変わったのかわかるように見て、ほぐして、変わったかどうかの確認をする・・・その繰り返しが子育ててであり細かいケアは親だけが出来ることだとお話されました。

操体法の医師 橋本敬三は「正体に病なし」という言葉を残しています。これは「整った体は病気にならない」という意味だそうですが、ゆがみや病気は自分が作っているという事だそうです。もしゆがみや病気がある時、その原因は自分でいつ作ったのか振り返る必要があります。もちろん原因は体、精神的な物様々です。しかし、原因を作ったから、見逃してしまったから失敗、で終わりではありません。失敗することは悪いことではなく大切なのはそこから原因を探り適切なケアをするか、その繰り返しだと教えて下さいました。そして、親の諦めない姿勢、私達支援者のサポートで子どもの可能性が広がると伝えて下さいました。
(Aoyagi)