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平成28年度(11)迫きよみ 「育児用品の変遷から子育てを考えてみよう」

(11)【舞鶴】11/27 
「育児用品の変遷から子育てを考えてみよう」 迫きよみ

「育児用品の変換から子育てを考えてみよう」
講師:迫きよみさん(NPO法人 子育てを楽しむ会 つどいの広場 りぼん)

今年度も残すところあと5回を切った15のまなび第10回目は「育児用品の変換から子育てを考えてみよう」というテーマで、子育ての文化研究所メンバーである迫きよみさんを講師としてお話を頂きました。ご存知の方も多いかと思いますが、迫さんはおんぶ、抱っこをキーワードに今まで子育てを考えてこられ様々な活動、取り組みをされています。今回、お話をするにあたり、迫さんは東京の立川の図書館に数日通い詰め、昔の育児雑誌、文献からだっことおんぶに関する資料を集めてこられました。またその研究は、この日に発刊された『AKGO②』を編集するにあたり参考にされました。

時代は遡る事1982年。育児雑誌で「ねんねこばんてん」という言葉が載りました。掲載ページも実際見せてもらいましたが、おんぶの位置が高く、且つ、おしゃれな印象でした。しかし、その後すぐにメッシュ記事のおんぶひもや横抱きのだっこ紐が載り、実はこの時代からそのような育児グッズが手に渡っていました。
2年後の1984年には「3点サポート」という機能を表しただっこ紐が登場しました。これは3点で体幹を支えてからカバーを被せるタイプのものです。ここまで横抱きでも3点サポートでも「だっこ紐」と表してきましたが、実はこの時代、「だっこ紐」という言葉ではありませんでした。「前おんぶ」「後ろおんぶ」という言葉が主流でした。「だっこ紐」という言葉は山口百恵がだっこ紐を使いブームになったからだそうです。当時のスナップ写真もいくつか見せて頂きましたが、そこには「前おんぶ」「後ろおんぶ」をするパパが載っており、「イクメン」という言葉もこの時代から使われていました。そして何より、皆さん紐を使わなくてもしっかりした位置と抱き方で「前おんぶ」「後ろおんぶ」をされていました。

時代は少し流れ1994年。首がすわる前からでも使えるだっこ紐が登場。お出かけのサポートや簡易なものが主流となり、「母親として生きる」事を支えるものとしてだっこ紐が使われるようになりました。10年前に使われていただっこ紐とは、目的、概念が変化してきたようです。それでも1997年ぐらいまではだっこ紐を使っても子どもはしっかりパパ、ママの手におしりが包まれ、足もMの字に開いていました。
しかし、1998年から2005年ごろまでをピークにたくさんのメーカーからだっこ紐が大量に登場しました。抱っこベルトやポーチタイプ、多機能多素材など様々な形の抱っこひもは外国人モデルを起用して掲載されました。一見、おしゃれに見えますが実際付けるのは日本人であるためモデルと同じように付けてもぴったりした位置がわからず、“とりあえず付けている”という流れになりました。その流れのまま2009年以降、それまで包まれていた子どものお尻から手が外れた状態が多くなりました。更には長時間使用しても疲れないベルトや「抱っこであやす」という謳い文句の抱っこ紐も登場。この流れに対し迫さんは、子どもを包む手が外れたことへの問題意識、長時間使用することが前提という概念に変わってきたことや、あやし方もわからなくなってきた変化を述べられました。

現代の利便性を求めた抱っこやおんぶですが、もともとの抱っこやおんぶの概念を探るため迫さんは宮古島と新潟に出向き、昔の抱っこやおんぶはどうだったのか、昔の子育てのお話を聞いてこられました。昔は家族全員で農作業をし、子どもも多かったため手が足りず、おんぶは生きていくために必要な手段だったようです。生活=農作業が基本だったためおんぶをするにしても“いかに体を楽にするか”という考えから自然と“上の方におんぶする”(重心を上にする)ようになりました。そうすると、自然と子どもは肩の後ろから親と一緒に同じ物を見る事が出来ます。地域によって紐に使われている素材、巻き方に違いはありました。また、大人は忙しかったため、きょうだい間で抱っこやおんぶをするのが当たり前でした。だからこそ、誰もが抱っこやおんぶを身近に感じ、自然と自分の子どもにも、自分でしてもらった抱っこやおんぶをし、受け継がれてきました。

子育ては受け継がれれば出来ることも、今はそれが途切れているため、出来ない事、知らない事が多いのです。また、伝える方も無意識のうちに身に着けていたため教え方がわからないのです。そのため子育ての伝承を今の子育て家庭、子育て支援者に繋ぐため、15の学びを通して学んだエッセンスを盛り込んだ冊子『AKAGO』を発刊する運びになりました。今回紹介された『KAKGO②』は、抱っことおんぶをメインにして迫さんが代表編集者として作りました。(『KAKGO①』は11月中に発刊予定です。)これを読むことで傷つかないよう言葉一つ一つに配慮し、「私にもできるかな」と思ってもらえるようにしたとのこと。今までの学びと迫さんが研究されたものを合わせ、何が正解かとは書かず、「こんな方法もあるよ」と新しい子育てのポケットをそっとプレゼントできるようにと思いを込められました。今まで明確な回答が無かった「いつからおんぶして良いのか」という質問に、どこかで伝えなければという思いから掲載しています。参加者の皆さんには『AKAGO②』を配布させていただき、内容を確認しました。最後には「おんぶにチャレンジ」というページを参考にみんなで一本紐のおんぶ講座をして締めくくられました。