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平成28年度(8)木津陽子 「生きる力を育てる“遠野のわらべうた”」

(8) 【宇治】9/4
 「生きる力を育てる“遠野のわらべうた”」 木津陽子

「生きる力を育てる遠野のわらべうた」

講師:木津陽子さん

土曜日の舞鶴会場に続き、9月4日(日)、第8回となる15のまなびは「生きる力を育てる遠野のわらべうた」をテーマに木津先生に、宇治会場でお話を頂きました。わらべうたに興味、関心を持ち、遠くは福島県から来られた方や団体での参加もあり、20名を超える参加者となりました。幅広い世代の参加となり、それぞれの世代から見た「わらべうた」の魅力を感じる事が出来たかと思います。

講師の木津先生は、もともと京都生まれの京都育ちでしたが、ご結婚され東京に引っ越され、周りは誰も知らない中での子育てで不安やお子さんの夜泣きの悩みを抱えている時にわらべうたに出会ったそうです。
もともと、わらべうたの「わらべ」は一般庶民を表し、「わらべうた」は一般庶民の気持ちが込められているそうです。つまり、昔の一般庶民の生き方が込められており、それを赤ちゃんの育ちに伝えていきたいと話して下さいました。先生は「伝承の子育て」と表し①わらべうた、②昔話、③なぞかけの三つを挙げられました。この三つにはそれぞれ①話す力、②聞く力、③考える力が育まれるとのこと。わらべうたは話し言葉にも繋がるため。昔話は、いくつも聞くのではなく、一つの話を長く骨身に染みるまで聞くのが良いとの事。最初はわからなくても何度も繰り返して聞くうちにわかるようになる。読み手の相槌を感じ取り聞き上手になるとのこと。なぞかけは、一つの事を色んな言葉で色んな角度で表されるため考えられるからだと教えて下さいました。

わらべうたの中には①遊び唄、②呼びかけの歌、③はやし唄、④子守唄の四つがあります。遊び唄は手遊びなどにも通じますが、目的は赤ちゃんが人を知る事。赤ちゃんに対して色々な表情、言葉、しぐさを遊びの中でやってみる。そうすると、赤ちゃんは人には色んな表情があって、そこから人には色んな感情があると気付くようになるそうです。ここで重要なのが目を見てやること。この遊び唄は後半ワークも兼ねていくつか紹介して頂きました。
呼びかけの歌は、自然への呼びかけの歌であり、自然への感謝、命の大切さを感じ取れるようになるのが目的です。都会には自然が少ないから難しい、と思わず、鉢植えでも良い、空ならどこにでもある、と身近な自然に目を向ける大切さを教えて下さいました。また、寒暖を感じることで五感をひらく役目もあります。寒暖を赤ちゃんに合わせて短い言葉で表現するのが大切との事。はやし唄は言葉の力を知ることが出来ます。子守唄は寝かせ唄とも呼ばれ、土地の歴史や生き方を伝えられます。

ここで、わらべうたを体験するためいくつかわらべうたの中の遊び唄を教えて頂きました。赤ちゃんは生まれると羊水の中から重力のある世界に出て来るため疲れます。そこに優しく声をかけてあげる赤ちゃんとの初めての会話「うんこ語り」です。おっぱいを飲ませる距離で赤ちゃんと目の焦点を合わせ会話します。「んこー」という短い言葉にいろいろな気持ちを乗せていきます。会話は声を発している間だけでなく言葉と言葉の「間」にも意味があります。その「間」を大切にして赤ちゃんとまなざしを合わせ気持ちを伝えていきます。これは一カ月ほど続ける根気のいるものですが、次第に赤ちゃんから同じように言葉が返ってきます。
次は、赤ちゃんの発達や月齢に合わせて気持ちを育てるわらべうたです。
① てんこ てんこ てんこ…顔の横まで手を挙げ、手首を返す(まねる、手首の運動)
② にぎ にぎ にぎ…顔の横で手を握ったり開いたりする(ひぎったり開いたり出来る)
③ かんぶ かんぶ かんぶ…首を振る(首がちゃんとまわる)
④ てうち てうち てうち…手をたたく(腰を強くする)
⑤ ちょつ ちょつ ちょつ…手をおでこに当てる(両手を顔まで挙げられる)
⑥ あた~ま なり なり なり…自分の頭をなでる(片手で、頭をさする)
⑦ ばんざ~い…両手を上げる(両手が上がる)

④は「じょうず じょうず じょうず」にも繋がり人の事を褒める気持ちが育ちます。⑤の「ちょつ」は「笑止」から派生した言葉で「恥ずかしい」という気持ちに繋がるとの事。⑥は「おいしい」と自然に感謝する気持ちに繋がり、⑦は「やったー」という達成感に繋がるとの事。これらは全て3回ずつ繰り返します。そのリズムは赤ちゃんにとって聞きやすく、同じ言葉で繰り返される事で土台が作られます。これらの遊び唄によって赤ちゃんの気持ちの「素」を起してあげる事が育てる上で大きなことだと話して下さいました。
また、オムツを換える時など、臭い時には「臭い」、きれいになったら「気持ち良い」など赤ちゃんの気持ちを代弁して関わると赤ちゃんも快、不快の区別がつくようになります。そうした「声を出す」関わりの大切さもいくつか教えて頂きました。
また、身体をつくる目的でハイハイしている時にうしろから「まて まて まて」と追いかけるのもわらべうたの一つとの事。そうして追いかけられると赤ちゃんは嬉しくて自分からどんどんハイハイをやりたがります。このように、声にならない声に応えてあげると、自分から行動する前向きな気持ちが育つとの事。

休憩後、後半は二人一組になって赤ちゃんの遊びを表す遊び唄をお互いにやり合いっこしました。実際にやってみることで目を合わせる難しさや声の出し方、やってもらう赤ちゃんの気持ちがわかりました。そして、目を見て話す大切さを感じることができました。どの方々も、とても優しい表情で語りかけていました。
赤ちゃんが何かできたら大人も声を掛け、それにまた赤ちゃんが反応します。そうした相乗効果が生まれ、人との関わりが始まると教えて下さいました。

参加された方のお子さんが先生のわらべうたに反応し色々なしぐさをしてくれました。そのたびに周りの参加した大人達は声をあげ、「じょうず じょうず じょうず」と声をかけました。人見知りは全然しませんでしたが、しばらくお母さんから離れ、何かできたり周りで声を掛けられると嬉しそうにお母さんの元に戻っていく姿が見られました。昔の子育てを今の子育てに伝える、まさしく「伝承の子育て」を感じられました。

  今回の内容が分かり易く書かれた本として、
『「わらべうた」で子育て 入門編 』阿部 ヤヱ (著), 福音館書店発行
をご紹介頂きました。